『R3.4月の日記』

4/1 精子の無償提供ボランティアが増えていますが、日本産婦人科学会は個人間の精子提供は認めていません。ただし、個人による精子提供に法的な決まりもありません。精子ドナーにとっての主なリスクは「財産分与」や「扶養義務」があり、レシピエントにとっての主なリスクは「性病などの感染症」や「同一提供者からの精子が多ければ、血縁関係での結婚が起きてしまうこと」が挙げられます。ただし、子どもが欲しいという願い以上に大切なのは、生まれてくる子どもの「出自を知る権利」ではないでしょうか。将来生まれてくる子どもが成人した立場に立って考えなければなりません。

4/2 デンマークでは、精子提供は自然な選択肢とされています。「子どもを持つなら法律婚をするべき」といった日本のような概念はないことが要因かもしれません。実際に、法律婚をしないまま子どもを持つカップルも多くいます。デンマークでは、子どもが18歳になったときにドナーの氏名、最終登録住所、生年月日が開示される「身元開示ドナー」と個人情報が一切開示されない「身元非開示(匿名)ドナー」の2種類の精子提供が許可されています。身元開示ドナーを選ぶと、子どもたちが成長して提供者に興味を持ったときに、コンタクトを取ることができるようになります。ヨーロッパ全体で見ると、すでに匿名ドナー制度が廃止されている国も多く、世界基準で見ても、「子どもが自身のアイデンティティを知る権利はあって然るべき」という考え方が認知されつつあるのかもしれません。倫理的な問題や法整備など超えるべきハードルは多いですが、ドナー提供による体外受精を含む不妊治療により、愛情あふれる親子関係を築く家族はたくさんいます。自分たち家族の状況だけでなく、世の中にはさまざまなタイプの家族が存在することも伝えるなど、親が偏見を持たずに子どもに接すれば、子どもにはオープンなマインドが備わるそうです。このようなことを見習って、第三者の精子・卵子提供による生殖補助医療がより広く認められるべき選択肢だと思えてなりません。

4/3 春らしい陽気の中、とても素敵なカップルさんとご面談をさせていただきました。ヒラヒラと舞い散る満開の桜の花びらも、ご夫婦の明るい未来への門出を祝福しているようで、心が温かくなりました。精子ドナーにとって、面談のひと時は、何事にも代えがたい大切な時間です。

4/4 今日は桜の花見のピークにも関わらず「桜流し」の一日となりましたが、それを補って余りある、ご妊娠という嬉しいご報告をいただきました。3年以上にわたり精子提供を検討され、仕事との折り合いがついたことから妊活をスタートされましたが、幸運にもスケジュール通りすぐにご妊娠され、精子ドナーとしても安堵しました。

4/5 元テレビ朝日アナウンサーの竹内由恵さんが妊活体験談を告白されました。「妊娠にはタイムリミットがある」とい旦那さんの言葉が、あらためて自分の年齢と向き合うきっかけになり、「子どもが欲しい」という気持ちが強くなっていったそうです。仕事と妊活のどちらを優先するかの二択については、旦那さんの「仕事を優先して妊活を先延ばしにしてしまったら、もし授かれなかったときに後悔するかもしれない。でも今、妊活を優先して、それでも授かれなかったら、最善を尽くしたということで納得はできる」、「高齢出産は出産や子どものリスクも高くなる」という言葉で、「まずは家庭を築くことを優先しよう」と考えたそうです。、また、「夏までにタイミング法で授かれなかったらステップアップしよう」とタイムリミットを設けたことが、すぐには授かることができなくても気持ちを奮い立たせることができてよかったそうです。

4/6 年齢によっては、体外受精は自然妊娠より妊娠率が下がることがあり、タイミング療法を勧められることもあるようです。一般的に、体外受精の方が自然妊娠より妊娠率は高いとされていますが、年齢が上がると、良質な卵子を採取するために、10個程採卵するところを、倍の20個程採卵することになり、結果的に確率としては下がってしまうそうです。要は、卵子の質の問題なのでしょう。

4/7 「サウナで精子が減る」説を専門家が検証し、「週2回、3カ月間のサウナで量と運動量が減少」するという結果が出ています。成人男性が80度から90度のサウナに15分入ることを週2回、3カ月続けたところ、精子の量や運動量が著しく減少したそうです。ところが、サウナに入ることを3カ月やめると、半分程度にまで精子の状態は回復、半年後には完全に回復することが分かったそうです。体温が36度なら、身体の外に出た陰嚢内部の温度は33度前後であり、その状態が一番精子を作りやすいとされています。そのため、精子の持ち運び時の温度も33度前後がベストだといえます。

4/8 性別を早期に判定する「R先生」という方がいらっしゃるそうです。通常、赤ちゃんの性別が分かるのは妊娠20週くらいですが、11~13週くらいのときにエコーに映る「ベビーナブ」という赤ちゃんの背中の角度で性別を判定できるそうです。

4/9 SNS精子提供には、純粋なボランティア目的の方もいる一方、ウソの経歴で女性のカラダ目的やからかい半分の方もいます。騙されてからでは遅いので、学歴や身分などをある程度提示していただけないようなドナーは怪しいと思って、断る勇気も必要です。

4/10 夫が無精子症で自然妊娠は難しくても、精子になる前の精子細胞があれば、顕微授精で子どもを授かることはできます。顕微授精で3人目を出産された方もいます。人工的な方法にすがって子どもを望むなんて親のエゴなのかもしれないと思われるかもしれませんが、生まれてきた赤ちゃんの姿や成長する様子を見ると、そのような考えは小さくなっていくどころか、医療技術に感謝することになります。

4/11 不妊治療のストレスは、男性より女性の方が「感じる」という結果が厚生労働省が実施したアンケートで明らかになりました。「自身やパートナーの親からのプレッシャー」や「他の人の妊娠が喜べない」といった項目で、男性よりも女性の方がストレスを感じるようです。

4/12 イギリスで、妊娠中に妊娠した女性が、男女を同日に出産されたそうです。一般的に、妊娠すると生理が止まり妊娠しませんが、約0.3%の確率で妊娠中に妊娠することがあるようです。これは「重複妊娠」と呼ばれ、世界でわずか14例しか確認されていないようですが、このご夫婦は「特別な双子」と呼んで、子育てを楽しんでいるそうです。

4/13 今日はタイミング法による精子提供でした。心と体に一線を画すことがプロの精子ドナーですが、貴重な経験になるとともに多くのことを学び、そして感慨深く忘れられない一日となりました。タイミング法はお互いの信頼や当日の時間的余裕も必要になりますが、シリンジ法より新鮮な精子を確実に子宮まで届けられると実感しています。自然な方法での妊娠は誰もが望まれることなので、赤ちゃんを授かられたときは良い思い出にしていただけると思います。

4/14 妊娠や出産はいつがベストなでしょうか。アラサー世代の女性でこのことを考えない人はいないのかもしれません。女性のキャリアに妊娠出産は大きく影響しますが、良い意味で影響することもあります。子育て経験が、仕事にオリジナリティを持たせることにも繋がります。キャリアは待ってくれるかもしれないけど、赤ちゃんは待ってくれないので、考え過ぎない方がいいのかもしれません。身近にロールモデルとなる人を探して、具体的な出産時期をイメージしていただくのもよいかと思います。

4/15 『【同性カップル】「精子提供には感染症などのリスクも」子どもを望むレズビアン&ゲイカップルの苦悩とは?“日本には精子バンクがない“子育ての夢をどう実現?【LGBT】』、『【2人のママ】子育て中のレズビアンカップル「理解されるにはまだ時間がかかる」“2人のママ“隠すように言われたことも‥追いつかない理解と制度を考える【LGBT】』という2本のYouTubeを拝見しました。気づきになることがたくさん述べられていますので、精子提供をお考えの方は、ぜひ一度ご視聴いただければと思います。

4/16 遠方に精子提供の出張面談に行ってまいりました。まん防の発令中ですが、妊娠は時間との闘いでもあります。マスクだけでなく、メガネ着用などにも注意しています。それにしても、男性不妊でお悩みの方が本当に多くいらっしゃると実感しています。

4/17 アメリカで、トランスジェンダー男性が赤ちゃんを出産されました。ある1つの方法が、正しい方法や最高の方法とは限りません。家族の形も100人いれば100通りあります。子どもを含めて、お互いに愛し合うことができる新しい形んちういて、引き続き考えてみたいと思います。

4/18 エッグドナー(卵子提供者)について掘り下げている映画「Eggs 選ばれたい私たち」が公開中です。代理出産とは異なり、卵子提供を受けた女性自身が出産するため、戸籍には「実子」として登録されます。

4/19 大きくなった卵胞は必ずしも破裂するとは限らず、排卵しないまま黄体へと変化することもあります。いわゆる「黄体化未破裂卵胞」です。これが厄介なのは、基礎体温は上昇するので「排卵した」と勘違いすることや、全月経周期の7%程度(年に1回くらい)は生じるとされていることです。30㎜以上の卵巣嚢胞や50㎜以上の類腫瘍として認識されることもあります。タイミングを取るに当たり、これほど重要なことはないので、病院での受診(卵胞チェック)が重要だとあらためて感じています。【参考】黄体化未破裂卵胞について

4/20 卵子凍結に関するアンケート調査で、女性の約4割が「卵子凍結に興味あり」と回答したそうです。10年間でかかる卵子の保管費用の相場が60万~200万円と言われ、凍結した未受精卵の融解卵子1個あたりの臨床妊娠率は4.5~12%というデータもあります。キャリアで妊娠適齢期を逃さないようにしたいものです。

4/21 世界で双子誕生ブームが起きています。1980年代以降、世界における双子の出生率は、出産数1000件のうち9.1件から12.0件に上昇し、わずか30年で3割も増加しています。一卵性双生児の出生率は出産数1000件当たり4件の割合で一定していることから、この現象の要因は、生殖補助医療の普及と妊娠の高年齢化によるものだといわれています。

4/22 精子提供のご依頼をいただきました。複数の精子ドナーさんと面談をされた上で選んでいただけようで大変光栄に思います。

4/23 体外受精などの不妊治療の開始初期の女性の半数以上に、抑うつ症状があることが国立成育医療研究センターの調査で明らかになりました。不妊治療への保険適用が検討される中、不妊治療を受ける女性のメンタルヘルスへの支援が必要とされています。

4/24 結婚・家庭セラピストによれば、子供のために一緒にいるのが離婚するより悪いケースもあるそうです。荒れた結婚生活が子供に慢性的なストレスを与えているなら、どんな理由があったとしても一緒にいるべきではなく、それが自分で判断できないときは、セラピストの力を借りるとよいそうです。

4/25 SNSで精子取引が急増しています。ツイッターには「精子提供」「精子ドナー」などのハッシュタグが付いたアカウントが300件以上並んでいます。出生を知る権利が注目され、治療を休止する医療機関が相次いだこと、医療機関が見つかったとしても順番待ちに1年かかること、男性不妊側や同性カップル、選択的シングルマザーも増加していることなどから、精子提供への需要は高まっています。昨年12月に国会で成立した、人工授精などで生まれた子の親子関係を明確にする民法の特例法の付則では、2年をめどに精子提供のあり方などを検討し、必要な措置を講じるとしています。認知や相続に関するトラブルを避けるために、ドナーは法的な親ではないと担保する法律が必要とされています。

4/26 暖かくなり花のいろどりや草木のみどりが眩しくなってきました。スマホで写真を撮れば、一瞬で植物の名前を判定できるアプリもありますが、この花の名前は何かな~と考えながら図書館などで植物辞典を広げて調べてみるとより楽しいかもしれません。

4/27 レスリング選手の登坂絵莉さんが、五輪まで生理が1年半止まっていたというニュースを見ました。検査結果に問題はなかったそうで、精神的な部分が月経周期に大きな影響を及ぼすこともあるようです。

4/28 「35歳を過ぎると妊娠が難しくなる」という言い伝えは、少し時代遅れになっているようです。実際に、アメリカでは現代女性の生殖年齢が35歳から37歳に上がり、更年期を迎える年齢も上昇しているという調査結果が出ています。ヨーロッパの女性770人を対象とした別の調査でも、週に2回以上子作りをした場合、20~34歳の女性の妊娠率は84%、の一方で、35~40歳の女性の78%が1年以内に妊娠したという結果が出ています。卵子の質は年齢を重ねるごとに低下し、それが妊娠に影響を与えるのは確かですが、個人差はあるものの、全体的には妊娠にそれほど年齢の問題がないことを示唆しているようです。

4/29 メルカリが「卵子凍結支援制度」を試験導入し、5月1日から開始します。内容としては、社員の配偶者やパートナーを含む全社員が対象で、採卵や凍結保存などの卵子凍結に関する費用を妊活サポートの一環として上限200万円の補助を行うというものです。目的は「多様な人材が活躍する環境を創る」こととされています。

4/30 卵子凍結は「禁断の果実」と言われています。卵子凍結で妊娠を先送りにしても、子どもの数は増えません。それどころか、一度広まったら後戻りできなくなるそうです。どういうことかと言うと、例えば、第一子を出産する年齢が45歳の場合、25歳の場合と比べて世代間の年齢差が大きくなり、そうすると働き手の数も、全体の人口も減少していくことになります。また、キャリアを積みたい女性と、仕事を中断してほしくない会社の望みは一致しており、女性と女性が働く企業にとって、卵子凍結は一見Win-Winに見えるためです。一方で、長期にわたる凍結保存が卵子に与えるダメージもまだ解明されておらず年齢を重ねるほど出産のリスクも高くなります。凍結した卵子に望みを抱いても、妊娠が成立しなかった場合の落胆は計り知れません。重要なのは、どんな年齢で妊娠・出産しても安心して産み育てることができる社会の構築です。キャリアを一時中断した人が、復帰後に会社で不利に扱われないよう企業が適切な方策を取ること。そういった企業の取り組みに行政がインセンティブを与えることが大事だと言われています。社会全体としてミスリードのないようにしなければなりません。