『彼女たちはなぜ第三者の精子で子供を産んだのか』

 先日「彼女たちはなぜ第三者の精子で子供を産んだのか――無精子症の夫婦、選択的シングルマザー…それぞれの事情」というニュースを目にしました。
 内容は、「個人ボランティアにより提供された精子で実際に子供を授かった女性たちが、その理由、葛藤や苦悩を告白する」というものです。
 理由としては、「トラウマにより、男性と付き合うことが怖くなった」、「日本にはAIDを行なう病院が少なく、”精子ドナー不足”で治療まで1年待ちの状況であった」、「年齢を考えれば、治療を待つ時間がなかった」、「養子縁組は、審査が厳しく、金銭面のハードルが想像以上に高かった」などが挙げられていました。
 葛藤や悩みとしては、「すごくいけないことをしているのではないかといった後ろめたさ」や「夫以外の男性の精液が体に入ってくることへの抵抗感」が挙げられていましたが、それほど目立った意見はなく「最初だけで次第に慣れていきました」とか、「性感染症検査証を持参して精子に異常がないことを示してくれた点にも安心感が持てました」といったコメントがありました。
 それだけに、願っても子供を授かれない日々に涙を浮かべられている女性たちの苦しみの大きさをあらためて思い知らされました。それと同時に、個人ボランティアの是非について議論はあるとしても、今現在、自分の目の前に、希望が見えない闇の中を何年もの間苦しまれている女性がいるのであれば、まずは、できる限りの支援をすべきではないかと感じました。
 また、記事の中で、長野県の産科婦人科小児科病院の院長は「子供が欲しくても叶わない人たちの苦しみ、まずはそれを知ることが、家族のあり方が多様化する今、大切である」、「生まれてくる子供が幸せになるためにも、まず夫婦が対等な関係にあり、肯定的にこの治療を受け入れていることが大切である」と述べられていますが、正にそのとおりだと思います。
 記事のまとめとして、「匿名の第三者からの精子提供を受けて治療を行なう際には、夫婦のカウンセリングや、子供のためにドナーの情報をきちんと保管しておく必要がある」、「当事者が治療を肯定的にとらえるためにも、生まれてくる子のためにも、国がきちんと法律や制度を整えることがとても重要である」といったことが記載されています。
 このニュースを読んで私は、精子提供を希望される女性の事情は人それぞれであるということを再認識しましたし、国が社会情勢の変化に応じた支援体制をしっかりと整備するまでは、個人ドナーは、暗闇のトンネルに光の出口を与え、その先の道もの安全も約束できるように、責任を持ち、モラルを守って活動をしなければならないと感じました。
 そのためには、双方の理念や条件が合うか、合わない場合は割り切れるか、納得の行くまで話し合ったうえで、パートナーの方の気持ちも踏まえながら、活動を行わなければならないと思います。ゆくゆくは、被提供者の人数制限が基準として設けられ、第三者から精子をもらって妊娠したという事実を明かせる時代、女性が「ただただホッできる」生活を送れる時代がやって来ることを願います。

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